防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   2011年5月15日号
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 東日本大震災が発生してから2ヶ月が経過した。地震と津波の爪痕はいまだ大きく、現在も1万人以上が避難生活を送る中で、統合任務部隊は給水、入浴、給食、医療などの各支援に全力を挙げている。電気・ガス・水道などのライフラインの復旧が滞っている被災地では、高い自己完結性を持つ自衛隊が活躍しており、5月9日までに行ってきた生活支援の実績は、給水約3万400トン、給食約357万食、燃料約1400キロリットル、入浴約53万人、医療約2万2000人に上る。また、音楽隊による慰問演奏を各所で実施して、長引く避難所生活を過ごす被災者を励ました。被災地の復旧・復興に貢献する自衛隊の生活支援活動を、現地の隊員の声とともに紹介する。

被災者から感謝の声

入浴支援
 厳しい避難生活が続く中で、被災者にとって温かい風呂に入れることは衛生面の問題だけでなく精神的な健康のためにも重要だ。現地では電気・水道・ガスが断絶された状況でも入浴を提供できる「野外入浴セット」が活躍した。阪神淡路大震災や新潟県中越沖地震の際にも使用されたこの装備は、天幕の中に2個の大きな浴槽が置かれ、ここにボイラーで温められた湯を張る。シャワースタンド、すのこが敷かれた脱衣所には服を入れるかごも完備されている。1日に約1200人が入浴でき、現在も多くの被災者が利用している。
 海自では、「おおすみ」型輸送艦などの広い艦内スペースを利用して入浴支援を実施。「くにさき」「しもきた」の車両甲板に木材等で骨組みを作り、それをビニールシートで覆って湯を張った仮設浴場が設置された。
 空自松島基地でも3月25日からマイクロバスで住民を基地内まで迎え入れ、隊員浴場を開放している。第4航空団所属の石川桜麻2空尉は「少しでも力になれれば嬉しい。被災者の笑顔が隊員の力になる」と話している。

様々な工夫も
 隊員たちが被災者に、より快適に過ごしてもらおうと努力を重ねる姿も見ておきたい。
 6師団が所有する「野外入浴セット」は2コセット。足りない部分に関しては隊員が装備品に工夫を凝らして対応した。その1つが野外炊事具や除染装置、渡河ボート等を使った入浴・沐浴施設だ。第6師団所属の武田信彦3陸佐は「野外炊事具を使ってお湯を沸かし、そのお湯をためて頭を洗ってもらったり、除染装置を使ったシャワー施設、ボートを浴槽にした入浴施設を考え出した」と話している。
 また、入浴時間を利用して希望者に衣服等の洗濯をする38普連などの部隊もある。野外洗濯セット2型により洗濯し、マイクロバスで帰るまでに本人に手渡し出来るようにしているきめ細やかさだ。海自輸送艦でも入浴中に艦内の洗濯機を活用して洗濯支援をおこなったほか、「しもきた」では乗員が持っている携帯電話の充電器を被災者が利用できた。

給水支援
 被災地では震災で断水が起こり、安心・安全な水を求めて給水に来る被災者の足取りは絶えることがなかった。飲料水としてだけでなく、体を拭いたりトイレで使用するための生活用水を求めて、被災地の各所で水トレーラーの前に多くの人が並んだ。
 福島県・郡山市、いわき市などで給水支援を行った30普連では、1日の給水量は活動当初、平均約5〜7トンに上った。中には、手に持ちきれないほどのポリタンクを持って給水に来る被災者もいたという。「ありがとう。自衛隊さんも大変ですが頑張って」と自衛官に話しかける人もおり、「生き生きと過ごす被災者の姿に逆に励まされた」と30普連広報の廣瀬亮3陸曹は現場での感想を述べている。

給食支援
 被災地で活躍している野外炊具1号は、200人分の食事(主食、副食)を1時間以内で作ることができる優れもの。おにぎりや味噌汁、カレーライスなど温かい食べ物が食べられるとあって、被災者からは大好評だ。炊き出しのほかにも、被災者に元気になってもらおうと、4月4日に第10師団が野外炊具1号で作った熱々の「きしめん」と「ういろう」が提供された。海自八戸航空基地でも海自OBが地元名物の「せんべい汁」を作り、特に地元の料理ということで被災者を喜ばせた。

隊員の声
第13特科隊(日本原) 陸士長 中園 枝里
 私は阪神大震災で祖母を亡くし、私自身も神戸に住んで居たため被災しました。当時、私は10歳で、自衛隊の存在を知りませんでしたが、人命救助で崩壊しかけの家屋の中に入っていったり、埃まみれ泥まみれになりながら活動する自衛官の姿を何度も目にして、「人のために命懸けで活動している自衛官は凄い、私も将来自衛官になりたい」と小さな夢を持ちました。
 私も今回の東日本大震災では支援する立場となり、福島県相馬郡新地町の役場に派遣され、炊事支援要員として活動しました。
 被災者の方々に、少しでも元気の出るような食事を提供するため、必死に調理しました。「ありがとう、美味しかったよ!」と言われると、疲れも忘れ次の食事も頑張って作ろうと、逆に元気をもらいました。
 初めての災害派遣で、「私に何が出来るのだろうか?」と不安も多かったのですが、現地で沢山の事を学ぶ機会となり、自分自身も成長出来たと思います。今後は、この経験を自衛隊生活でも発揮していきたいと思います。


雪月花
 今回の自衛隊災害派遣は3月11日の地震発生直後から始まった。2ヶ月を超える献身的な活躍は国民の感謝の渦になっている。本紙では眼に見える形で隊員の方々にこの意を伝えるため著名人によるメッセージを募った。時間を置かずに横綱白鵬、星野仙一監督、松たか子さん、喜多郎さんら芸能・スポーツ・文化人50人から感謝の肉筆が寄せられた。西田敏行さん「前線で命を賭していることに感謝の気持ちでいっぱいです。どうかこの国を助けてください」役所広司さん「日本国民は、皆さんの活躍により希望を捨てずに頑張ろうとしています」。4月1日号の見開きページに掲載したものがこれである。国民がこれほどまでに自衛隊に感謝と期待を寄せているのか、皆さんの熱い気持ちが文面から伝わってくる。そして一様に自衛官自身の健康を心配しながら無事に帰ることも祈ってくれている。本紙の編集部員たちもこの寄せ書きには溢れそうな涙をかくして校正をつづけていた。4月15日号のAKB48のメッセージも友人を通して超スピードで実現した。AKB劇場で事務所の責任者にお願いしたのが4月8日、11日の締め切りにはもう間に合わせてくれていた。あの陽気な国民的アイドルたちも気持ちを伝えることが出来るならと競ってサインをしてくれたようだ。今は1億3千万人が自衛隊の応援団になったようにさえ見える。
(所谷)

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