5月30、31の両日、ロシア・モスクワで開催されたグランドスラム・モスクワ大会女子70kg級に出場した國原頼子2陸曹が強豪を押さえ優勝した。
　この大会は柔道の国際大会としてはワールドランキングポイント300点が加算される極めて重要な大会で、この大会に出場する國原は、ある意味で瀬戸際だった。ここで勝てなければ信用を失い、モスクワ以後の重要な国際大会への代表に選考されない可能性があった。しかし、國原はそれほどプレッシャーを感じず試合に臨むことができたという。國原は1回戦開催国ロシアが送り込んだ刺客マルガリータ・ガルツィエバをわずか13秒右の大内刈りで1本勝ちに仕留めると、2回戦は07年世界選手権王者で、かつて國原が勝てなかったエマン・ゲブリセ(仏)。相手が以前と比べて動きが止まって見えたというくらい冷静さを保ちつつ積極的な攻めを行い、相手に攻める隙を与えず3本の指導を受けさせ技ありで勝利。続いて準決勝ではフランス国際準優勝現在ワールドランキング5位のパスケット・マリエ(仏)を右の背負い投げの技ありで決めた。決勝においては北京五輪銅メダリスト、エディス・ボスと接戦の末、ゴールデンスコア(延長)に入った1分3秒後、相手の一本背負いを返し技で技ありが決まり金メダルを射止めた。國原は相手をしっかり見ることで自分がしなければならないことを冷静に、しかも着実に行えたと語る。
　この結果、國原のポイントは300点が加算され、現在460点ワールドランキング2位に躍り出た。
　今後、國原は既に優勝経験のあるユニバーシアードに出場し、12月にはグランドスラムに格上げされた嘉納杯で昨年の雪辱を期せれば、来年1月に開催されるマスターズへの出場の可能性も出てくる。
　マスターズは国枠に関係なく、ワールドランキング15位以内の選手で実力世界一を競う大会で今年度初めて開催される。現在ランキング2位の國原には十分可能性がある。