防衛ホーム新聞社・自衛隊ニュース
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自衛隊ニュース   2008年4月1日号
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防衛省自衛隊 高級幹部が異動 2、3面
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52期386名、幹部自衛官の道へ
防大卒業式
福田首相「わが国の平和と繁栄を守る礎に」
来賓、父兄らが見守る中、卒業を祝って恒例の帽子投げ(3月23日、防大記念講堂で)
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 穏やかな春の日差しに恵まれ、桜が開花した3月23日、防衛大学校(神奈川県横須賀市)の本科52期学生、理工学研究科前期課程45期学生、理工学研究科後期課程5期学生及び総合安全保障研究科10期学生の卒業式が、自衛隊最高指揮官の福田康夫首相を迎え、同校記念講堂で行われた。

 午前10時、壇上に石破茂防衛大臣、小泉純一郎元首相をはじめ防衛省・自衛隊の高級幹部、衆参国会議員、各国駐在武官、来賓多数が陪席する中、福田首相が臨場、防大儀仗隊による栄誉礼を受けた。全員で国歌を斉唱したあと、五百籏頭眞(いおきべ・まこと)校長が本科52期学生424名(うち女子23、留学生9)一人ひとりと研究科各代表に卒業証書を授与した。
 学位記授与に続いて五百籏頭校長が「科学的な思考力、広い国際的視野、豊かな人間性」の涵養を図る防大教育について触れながら「胸を張って幹部自衛官の道への道を歩むよう」式辞を述べた。次いで、福田首相が訓示の中で昨年来の様々な問題について触れ「全力を挙げて防衛省・自衛隊の改革を実行する」ことを強調するとともに卒業生に対して「わが国が国際社会の中で永く平和と繁栄を享受できるように、その礎となり、常に国民と共にあり、国民を守り続けていくという使命を確認し、新たな任務に精励するよう」要望した。また、石破防衛大臣が厳しい国内外の情勢について触れ「適切な文民統制を実現し、国民に信頼される新しい自衛隊を作るためにも、政治に対して意見することが自衛官の権利であり、義務でもある」と強調、「ここにいる者すべてが心を合わせ、力を合わせて共に新しい、素晴らしい歴史を創ろう」と訓示した。来賓を代表して北岡伸一東大教授が「将来のいかなる事態にも対応できるよう、歴史を紐解いて教訓を求め、また世界情勢に対する研究を怠らず、絶えず研鑚を続けるよう」祝辞を述べたあと、五百籏頭校長に対して卒業生代表が力強く答辞。最後に、学生全員で声高らかに学生歌を斉唱し卒業式を終えた。
 引き続き、一般幹部候補生任命・宣誓が行われ、折木良一陸幕長が陸上要員176名(うち女子9)、吉川榮治海幕長が海上要員100名(同5)、田<INLINE NAME="画像枠" COPY=OFF>神俊雄空幕長が航空要員110名(同6)をそれぞれ任命、陸海空各代表が力強く宣誓したあと、壇上の福田首相に宣誓書を託し、固く握手を交わした。式典終了後、恒例の帽子投げが行われ、卒業生一同、全身で喜びを表わしていた。
 引き続き、同校陸上競技場で石破防衛大臣を観閲官に迎え、観閲式が行われた。来賓や陸海空の各制服に着替えた卒業生、家族、関係者ら多数が見守る中、石破大臣の巡閲に続いて、防大OBパイロットによる祝賀飛行や在校生の観閲パレードが順次整斉と行われ、晴れの門出を祝った。(田中宏範、金澤修治)

ゴラン派遣隊員から防大52期卒業生へ
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 防大52期卒業生に対して現在、ゴラン高原で任務遂行中の第25次ゴラン高原派遣輸送隊長の湯下健太郎3陸佐(39期)と、UNDOF(国連兵力引き離し監視隊)司令部副広報幕僚の秋山洋三1陸尉(44期)の両先輩からメッセージが寄せられましたのでご紹介します。
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ゴラン派遣輸送隊長 湯下兼太郎
 防大52期生の皆さん、御卒業おめでとうございます。私は平成16年3月から7月まで第221小隊指導教官を務めていました。かつて新入生として迎えた皆さんが、小原台での4年間を立派に終え、今まさに幹部自衛官として大きく羽ばたこうとされていることを、非常に嬉しく思います。
 私は現在、ゴラン高原派遣輸送隊長として、中東・ゴラン高原の大地で、北東北3県を中心に全国各地から集まった42名の隊員達とともに、国際連合兵力引き離し監視隊(UNDOF)で日本の代表として日々勤務に励んでいます。
 UNDOFは、第4次中東戦争後の1974年に、シリアとイスラエル間の兵力引き離し及び停戦監視を目的として設置されて以来今日まで続く、伝統的な国連PKOです。現在は、主にオーストリア、ポーランド、インド、スロバキア等から派遣された約1000名の軍人等から構成されています。このうち日本隊は、インド隊とともに後方支援大隊の一部として、生活物資等の輸送、道路の整備・補修、除雪、故障車の回収等の業務に携わっています。
 最近は報道されることも少なくなったゴラン高原派遣ですが、平成8年の第1次隊派遣以来、これまで約12年にわたり日本隊はUNDOFで黙々と任務を続け、その士気、規律、そして何より仕事の質に対して現地では高い評価を受けています。これは1次隊から続く諸先輩方のたゆまぬ努力のお陰ですが、それを支えるのは、実は国内における平素からの教育訓練の成果です。私をはじめ43名の隊員は皆これまで第一線部隊で勤務をしてきましたが、ゴラン高原にきて感じるのが、部隊での教育訓練で身に付けた知識や技能がそのまま現地での勤務に役立っていることです。このことから、世界においても自衛隊が高いレベルを有していることを改めて実感するとともに、誇りに思う次第です。
 私は平成3年から7年まで本科学生として小原台で過ごしました。冷戦終了、そして湾岸戦争と、国際社会が大きく変動する中で、自衛隊の任務や役割が大きく変わり始める時期でした。1年生の春、カッター競技会の応援の最中、ポンドの遥か向こうの東京湾を海上自衛隊のペルシャ湾派遣艦艇が太平洋へ向け進んでいく姿を、今でも覚えています。また3年生の時には、陸自部隊が初めてカンボジアPKOに参加しました。
 それから現在に至るまで、国内外の要求に応えて自衛隊の役割は変化を続けるとともに活動の場も国際社会へ広がってきました。そして近年では、自衛隊の本格的な統合運用態勢が始まり、防衛庁の省昇格とともに国際平和協力活動が自衛隊の本来任務となり、また海外任務も担う中央即応集団が発足するなど、冷戦期には考えられなかったような変化を遂げつつあります。実は、UNDOF日本隊も、このような変化と無縁ではありません。我々は、陸自唯一の海外派遣部隊として、中央即応集団の一員として現地で任務を遂行しています。また日本隊は陸海空各自衛隊の隊員から構成されていますが、第一線部隊の隊員にとり「統合マインド」を涵養する数少ない貴重な場でもあります。このような時代に幹部自衛官として自衛隊に奉職できること、また隊長としてこのようなUNDOF日本隊の素晴らしい隊員達を統率できることを、名誉に思っています。
 そのような現在の私が、ゴランの大地で遥か防大時代を顧みると、やはり小原台の4年間が現在に至るまでの基礎となったことを改めて実感します。皆さんはこれから指揮官として、部下隊員達の生命を預かり統率することになりますが、防大の大学教育で身に付けた教養、学生舎生活や校友会活動で学んだリーダーシップは、いかなる状況下でも部隊が進むべき道を見出し、部下隊員をして一致団結して任務達成に邁進させる上で必ず役に立ちます。また4年間の生活で培った陸海空を越える同期の絆は、まさに「統合マインド」の基礎となるとともに、必ずいつか役に立つ日が来ます。どうぞ皆さん、自信を持って幹部自衛官への道を進んでいただきたいと思います。
 これから陸海空幹部候補生学校にそれぞれ進み、その後全国各地の部隊に配置されることになりますが、部隊の仲間達は皆さんを待っています。当初は様々な不安もあると思いますが、若い幹部は部隊の活力の源です。どうか大いに、失敗を恐れず、様々なことにトライしていただきたいと思います。
 改めまして、御卒業おめでとうございます。先輩として、かつての指導教官として、ゴラン高原の地から、皆さんのご発展とご活躍を願っています。同じ幹部自衛官の仲間として、今度は部隊で、お会いしましょう。


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