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   2005年11月15日号
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(2面からつづき)
した。長官は米国の他、韓国、オーストラリア、東南アジアなどを歴訪され、フィリピンについては、日本の防衛庁長官として初めて訪問され、対テロ、災害対策や防衛交流などについて広く意見交換を行われました。また、本年6月4日のシャングリラ会合において、アジア太平洋における大量破壊兵器への対応について、「協力が可能な、小さな実務的なことから始めよう」とスピーチをされました。従来、東アジアでは、ヨーロッパと異なり、多国間の軍事協力の枠組みがありませんでしたが、この長官の発言は、参加国の共感を呼び、本年8月のシンガポールにおけるPSIの多国間訓練につながったことを、同国の国防関係者から伺っております。加えてスマトラ沖大地震や、パキスタン等大地震における国際緊急援助活動についても、長官のリーダーシップの下、自衛隊は、主体的に活動し関係各国から高い評価と感謝の言葉を戴きました。今後、大野長官が築かれた防衛交流等の成果を礎に、さらに発展させるべく国際平和協力活動に主体的、積極的に取り組む覚悟であります。
 防衛庁長官として離任の直前まで腐心されたのは、米国とのトランスフォーメーション協議であります。冷戦の終結以降、特に9・11テロの発生以降、安全保障環境は、新たな局面を迎え、我が国と米国は、このような新たな安全保障環境に対応していく必要性を認識しました。本年2月19日の「2+2」において、日米両国は、共通の戦略目標についての理解に到達し、それらの目標を追求する上での日米の役割、任務、能力に関する検討が必要であること、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議を強化することで合意しました。それ以来、先月29日の、「2+2」において中問報告として取りまとめられるまでの間、大野長官は、抑止力の維持と沖縄等地元負担の軽減の両立という困難な課題の調整に率先垂範され、解決に向けて対米交渉に取り組まれました。普天間飛行場の移設先について日米の考え方が容易に合意には達しませんでしたが、実現できる案で合意しなければ日米同盟の信頼性は維持されないとの考えの下、長官がご尽力、陣頭指揮されて米国に理解を求めた結果、防衛庁の案で決着をみることができました。最後まで粘り強く米国と交渉を続けられた長官の姿勢と実践力を、職員一同は忘れることはできません。さらに約1万8千名の海兵隊将校等のうち約7千名の沖縄外への移転、嘉手納飛行場以南の相当規模の米軍基地の返還、第3海兵機動部隊司令部のグアム島の移転等については、長い間重い基地負担を行ってきた沖縄の現状を大きく変えるものであります。また、本土における都市化した厚木基地から岩国基地への空母艦載機部隊の移転、横田飛行場の軍民共同使用のための検討、横田空域における米軍が管制を行っている空域の削減等の施策は、日米安保体制の安定的運用のために欠くことのできないものと考えております。今後は、長官のご尽力の賜である今般の「2+2」の成果を踏まえ、地元の理解と協力を得ることに全力を尽くすとともに米国との政策及び運用面における緊密かつ継続的な調整、計画検討作業の進展、情報共有及び情報協力の向上等に取り組んで参ります。
 在任日数400日という期間の中、防衛庁・自衛隊のため、大野長官にはこれだけ多くの業績を残して頂きました。本日、大野長官が防衛庁を離れられることは、誠に寂しい限りでございますが、私どもは、新長官のもとに、一丸となって職務に取り組んで参る所存であります。今後とも、旧に倍するご指導、ご鞭撻を賜わるようお願い申し上げますとともに、大野長官の益々のご活躍とご発展を祈念いたしまして、送別の辞といたします。

額賀新長官「着任訓示」
 このたび、防衛庁長官を拝命致しました、額賀福志邸であります。約7年振りに、また皆様とともに働くことになりました。防衛庁長官として、国の防衛という国家存立の基本にかかわる崇高な任務に再び携わることとなり、光栄に感じているとともに、その使命と責任の重みを痛切に感じております。かかる大任を引き受けた以上、半世紀にわたり築かれてきた実績を引継ぎ、我が国の平和と独立を守り、更には国際社会で我が国に求められている責任と役割を果たすため、全身全霊を傾けていく所存であります。
 この際、防衛庁長官着任にあたりまして所信を申し述べ、私の決意の一端を表明させて頂きたいと思います。
 今日の安全保障環境は世界的な規模の武力紛争が生起する可能性が遠のいた一方で、宗教上、及び民族上の問題等に起因するさまざまな地域紛争が発生するようになりました。2001年に発生した米国同時多発テロに見られるとおり従来のような国家間における軍事的対立を中心とした問題のみならず、国際テロ組織などの非国家主体が重大な脅威となっているのであります。大量破壊兵器や、弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織の活動等新たな脅威や、平和と安全に影響を与える多様な事態の態様が今日の国際社会における差し迫った課題となっております。このような状況にありまして、我が国が今後とも平和と独立を守り、国の安全を保つために昨年末に策定された、防衛計画の大綱の多機能で弾力的な実効性のある防衛力という考え方の下に、新たな脅威や多様な事態に対しても実効的に対応して参りたいと思います。また、国際社会との協力を重視し、安全保障環境の改善を図るとの観点から国際平和活動に主体的かつ積極的に取り組むとともに、国際社会における協力の基盤作りとなる安全保障対話・防衛交流を積極的に進めていくことが必要であります。更に、従来と同じように、日米安全保障体制を堅持していくことが不可欠であります。
 以上のことを踏まえまして、次の三点について申し述べます。
 第一に、防衛計画の大綱に示された体制に向けて段階的に移行するための最初の中期防衛力整備計画に墓づき、実行的な対応が出来るように、即応性、機動性を向上し、多機能で弾力的な実効性の有る防衛力を効率的に整備して参ります。また統合運用につきましては、来年3月には、統合幕僚監部、統合幕僚長を設置し、陸海空の自衛隊の一体的運用による迅速かつ効果的な対応が出来るよう統合運用体制を強化して参りたいと思います。
 第二に、国際平和への取り組みであります。米国同時多発テロ以降、依然として国際社会は、テロとの戦いを続けております。先の国会に於いてテロ対策特措法の期限が1年間延長されたところであり、引き続いて自衛隊は同法に基づいて、インド洋において米軍等の艦船に対する洋上給油等の協力支援体制を行って参りたいと思います。国際的なテロリズムの防止及び根絶のために、国際社会の一員として、引き続き、積極的かつ主体的に取り組んで参りたいと思います。
 また、イラクにおきましては、憲法草案が承認をされ、民主国家再建のための基盤ができたところであります。更なる政治プロセスの進展のためには、依然として国際社会の支援が必要な状況に変化はありません。イラクの国民の要望や国際情勢を踏まえ、現地の状況をよく見極めつつ、イラクの復興に主体的かつ積極的に貢献して参りたいと考えます。
 第三に、日米安全保障体制とそれを基調とする米国との緊密な関係を一層強化してまいることであります。日米安全保障体制は、我が国の安全やアジア太平洋地域の安定のために、引き続き重要な意義を有しております。前長官がご尽力をされ、過日、日米安全保障協議委員会において中間的な取り決めがなされました。自衛隊と米軍の役割、任務能力、在日米軍の兵力構成見直しにつきましては、その成果を引継ぎ、具体的なものとするための努力をしてまいるとともに緊密な協議などを通じて、国民のご理解を得つつ日米安全保障体制の信頼性の一層の向上に努めて参りたいと思います。
 このほか、国政における防衛の重要性に鑑み防衛庁の省移行につきましては、政治の場において積極的に議論をし、早期に実現が図られるように努力をして参りたいと思います。
 最後に諸官の一人一人が国民の安全と平和を担っているのだという任務の重要性とその責任を自覚し、高い規律と士気をもって任務に邁進していただきたい。私はここに、我が国の防衛に全身全霊をもって取り組むことを固く誓うとともに諸官がそれぞれに課せられた任務を一丸となって取り組み、全うされることを希望し、私の着任の訓示といたします。

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