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   2005年11月15日号
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新たに16柱を顕彰
厳粛に中央追悼式
 平成17年度自衛隊殉職隊員追悼式が10月29日、防衛庁慰霊碑地区(メモリアルゾーン)で厳粛かつしめやかに行われ、殉職隊員のご冥福をお祈りした。今年度新たに顕彰されたのは、陸自9柱、海自2柱、空自5柱の計16柱で、警察予備隊以降の顕彰者数累計は1,765柱。
 式には、小泉純一郎首相をはじめ防衛庁・自衛隊の高級幹部、衆参国会議員、遺族会等部内外関係団体の長や来賓多数が参列した。
 午前10時、国歌斉唱に続いて陸自中央音楽隊の荘厳な演奏の中、米国出張中の大野功統長官にかわって今津寛副長官が新殉職隊員16柱の名簿を奉納した。次いで、特別儀仗隊の捧げ銃とともに参列者全員で拝礼、黙祷を行った。
 小泉首相は追悼の辞の中で「御霊は、我が国の平和と独立を守る崇高な任務に志を抱き、自衛隊に奉職され、任務を遂行中に不幸にしてその職に殉ぜられました。このたび新たに祀られた御霊は16柱であり、訓練中の事故、あるいはタイ王国における国際緊急援助活動中に殉職された方々であります。自衛隊員としての誇りと使命感を自らの行為によって示した隊員を失ったことは、自衛隊全体にとって誠に大きな痛手であります。また、御遺族の方々の悲しみに思いをいたすとき、お慰めの旨葉もありません。私どもは、このような不幸な事態が再び起こらないよう、今後とも最善の努力を尽くします。御霊の貴い犠牲を無にすることなく、崇高な任務を全うできる体制を構築してまいります。御遺族の方々に心からお悔やみを申し上げ、御霊のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます」と述べた。
 また、今津副長官が大野長官の追悼の辞を代読し、国内外で多様化する「任務の遂行に際しては、隊員一人ひとりがより精強な自衛隊を目指して日夜精進して培った技能と自信を基礎としつつ、任務の重要性についての自覚と誇りを胸にして職務に精励しているところでございます。そのような中にあって本日顕彰させていただいた方々をはじめ幾多の方々が旺盛な責任感のもと、身の危険をも顧みず、任務の完遂に努め、思いを半ばにして、その職に殉じられたことを決して忘れることはできません。このようなかけがえのない方々を失ったことは、ご遺族はもとより自衛隊、ひいては国家にとって誠に大きな痛手であり悲しみに耐えないところであります。私どもは今後とも、一人ひとりに課せられた責務として、このような不幸な事態が再び起こらないよう最善の努力を尽くします。また、私どもは御霊の偉業を自衛隊員の鑑として長く顕彰するとともに、ご遺志を受け継ぎ、自衛隊の任務達成に全力で臨むことを、ここにお誓いするものであります」と述べた。
 小泉首相、今津副長官、新遺族が順次献花したあと、関係者の献花、今津副長官挨拶、遺族代表挨拶、拝礼、特別儀仗隊による弔銃斉射などが行われ、故人を偲びつつ、その志の継承を全員で誓い追悼式を終えた。

83個人、43団体に長官感謝状を贈呈
防衛協力・自衛官募集で功績
 平成17年度防衛庁長官感謝状贈呈式が10月29日、グランドヒル市ヶ谷で行われた。これは、自衛隊記念日行事の一環として防衛協力や自衛官募集で功績のあった方々を表彰するもので、今年度は83個人、43団体が表彰された。(写真)
 午後2時、防衛庁・自衛隊の高級幹部をはじめ関係者多数が陪席する中、米国出張中の大野功統長官にかわって今津寛副長官が受賞者一人ひとりに感謝状を贈呈した。
 引き続き、今津副長官が長官訓示を代読し、平素から防衛庁・自衛隊に対する格別の支援協力に感謝しながら国内外で自衛隊の役割が多様化したことを強調、国民の負託に応えるためにも「一層のご支援、ご協力を」と要望した。
 次いで、受賞者を代表して小泉不二夫氏(北海道)が国内外で活動する自衛隊の献身勢力に感謝しながら今回の受賞を機に「一層の支援を続けていきます」と挨拶し、式を終えた。
 (受賞団体、個人名は紙面をご覧ください)

<論陣>
敢えて『火中の栗は拾わないで』
バリ島のテロ・JIの実体を知ろう
 自衛隊関係者の子弟の中には、あとわずかでやってくる冬休みに海外旅行を計画している人もいるだろう。パック旅行だとひと月前の申込みが原則。受験をひかえている学生、生徒にとっては、最後の追い込み勉強の期間中だが、中には「ちょっと息抜きに海外へ」という人がいることも耳にする。しかし、ことしはインドネシアやイスラム教徒などが多い国への旅行は思い止どまった方がいいようだ。イスラム教徒すべてが危険集団という訳ではない。しかし、最近の特徴としてイスラム過激派の動きが極度に尖鋭化し『テロ事件』をひき起こしている傾向が強いからである。10月中はイスラム教の断食月(ラマダン)。これが明けると「再び過激派が動き出す可能性がある」という人がいる。
 敢えてインドネシア国名をあげたのは、さる10月1日、インドネシアが誇る観光スポット・バリ島の同時テロで日本人を含む多数の死傷者が出たからである。「バリは平和な島」「インドネシアは平穏」と思いがちだが、インドネシアは2000年8月1日、ジャカルタでフィリピン大使館がテロに襲われ2人が死亡したのをはじめ、9月13日にはジャカルタの証券取引所、10月には各地のキリスト教会が襲われ、多数の死傷者を出した。そのご2002年10月12日にはバリ島のディスコで爆弾テロが発生、202人もの人命が失われている。ジャカルタ、スラウェシ島などでも同様のテロ事件が発生、そのたびに多くの死傷者が出ている。
 一般にいわれているのはインドネシアには約2億人のイスラム教徒がいる。過激派はその中のわずかひとにぎりにすぎないのかも知れないが、組織、訓練度は非常に高い。この中でもジェマ・イスラミア(JI)という名のテロ組織は、小型爆弾製造技術も高度で、人込みの中で自爆する作戦など『聖戦意識』が強いといわれている。そのうえ、JIは、イラク、ロンドンなどでテロ事件を引き起こしているとみられている国際テロ組織「アルカイダ」とも連携していると専門家はみなしている。そういえば、バリ島のテロとロンドンのテロは、人が密集している場所にリュックサックや手提げバックに入れた小型爆弾をしのばせ、頃合を見計って同時『自爆』という方法など、共通点が実に多い。これは明らかに「連帯」を見せつけている。
 南方への旅行は自粛した方がいいという理由は、ほかにもある。相次ぐテロ事件の発生で、各国の取締り当局の警戒が厳重になっているのは確かだが、それに対してテロ集団側も組織を変えてきている。大組織を細かく分け『アメーバ的に細胞分裂』させ、小組織で最大の成果をあげる戦術単位を作っている。これは単にインドネシアだけではなく、連帯からの要請があれば「どこへでも行ってテロを実行する」態勢が整い始めていることを意味している。それはアメーバが東南アジア、中東などの諸国にいつでも出撃できるというわけだ。「いまのテロリストの動向を分析してみると、東南アジアがテロリスト達の新しい拠点になってきている」と専門家は言う。そうした見方がなされている地方に、敢えて「物見遊山」に出掛けることはあるまいという訳である。バリ島のふたつのテロ事件から言えることは、テロリストたちが狙っているのは外国人だということである。アルカイダとの連帯もあるだろうが、とにかく、島や都市の繁華街で外国人が大勢集まるレストランやディスコなどを標的にしている。バリ島のレストランなどはバリ島では一番にぎやかな『銀座通り』にあり、昼夜、観光客でいっぱいの店である。付近にはショッピングセンター、土産店なども多く、「現地の人より観光客が多い街」で有名なところだ。テロリストにしてみれば「累教徒を狙うには最適な場所」であろう。
 年間140万人もの観光客が訪れるバリ島にしてみれば、こんどの自爆テロ事件で観光客が減るのではないか――とインドネシア政府は心配しているようだし、「以前にも増して警備を強めるので安全は確保される」とPRしている。しかし、イスラム過激派集団にとっては「政府のPRとは無関係」。かれらは『イスラムの原点に戻る戦い』が使命であり、目的である。若い時には旅をしろというが、フランスや周辺諸国で暴動も発生したこの時期、敢えて『火中の栗を拾う』こともあるまい。

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