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   2005年9月1日号
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平成17年「防衛白書」を発表
中国の動向、国際平和協力活動など詳述
 防衛白書は、日本の防衛に関する基本的事項や過去1年間の事象について書かれた年次報告書。毎年刊行され、今年で31回目となる。本文は全ページがカラーで、写真や図表を多く取り入れている。今回の白書は、昨年12月に策定された新防衛大綱を踏まえ、日本を取り巻く安全保障環境や国際社会の安定化への対応が強調されている。また、中国に関する記述を大幅に増やしたことや、マラッカ海峡での海賊行為の頻発などから、東南アジア地域の海上の安全確保に関する項目を新設した。また、コラムでは国内だけでなく、イラクやゴラン高原など国際平和協力活動に従事した隊員達の声も多く紹介していることが特徴。防衛庁・自衛隊の活動については、スマトラ沖地震や新潟県中越地震など大規模災害での救援活動、イラク復興支援などの取組の内容を詳しく紹介している。各章ごとの概要については以下のとおり。

第1章「わが国を取り巻く安全保障環境」第1節では、国際テロ組織に対する国際社会の取組のあり方の変化、イラクをめぐる情勢、イスラエル・パレスチナなどの複雑で多様な地域紛争について。コラムでエネルギー問題の安全保障への影響について解説。
第2節では、アメリカ、ロシア、欧州主要国の国防政策と、国際社会の安定化への対応について。また、国連改革の動向やPKOの抱える課題等についての議論、軍事科学技の更なる高度化と非対称的な脅威に対抗するための技術の重要性について説明している。
第3節では、アジア太平洋地域の安全保障環境と、米軍の戦力前方展開の状況などについて説明。「朝鮮半島」については、北朝鮮の核開発や弾道ミサイルについての言動、内政の動向などについて説明するとともに、韓国の国防政策が書かれている。「中国」では、昨年11月の原潜潜没航行事案、東シナ海におけるガス田開発を含む海洋における活動の動向や反国家分裂法の制定、中国の国防費の伸びなど最新の事象についての説明のほか、2004年の中国の国防白書などを踏まえて、中国の軍事力が目指す方向や中国の近年の外交動向についても触れている。「ロシア」については、この地域に対する関心や、軍事、経済、外交面での動向について説明。東南アジアとの関係では、マラッカ海峡で日本船舶が襲われた事や各国の同海峡への関心の高まりなどを念頭に同海峡の海上の安全について。

第2章「わが国の防衛政策の基本と新防衛大綱、新中期防など」では、憲法と自衛権の関係など防衛の基本的考え方、新防衛大綱、新防衛大綱に示された新たな防衛力への移行を目指した新中期防を中心とした防衛力整備、統合運用体制への移行、日米の戦略対話の現況など日米安保体制について。
第1節では、わが国の安全保障の重要性とこれを確保する方策、憲法と自衛権との関係、国防の基本方針、国防の基本方針以外の基本政策(専守防衛など)について。コラムで「弾道ミサイル防衛と自衛権」「憲法調査会の報告書」について解説。
第2節では、昨年12月に策定された新防衛大綱について「基盤的防衛力構想」の考え方など過去の大綱からの変遷、新たに策定された背景を述べた上で、その内容について。
第3節では、新防衛大綱に示された体制に段階的に移行するために策定された新中期防の策定経緯と意義、計画の方針、主要事業について説明するとともに、平成17年度防衛力整備と防衛関係費について。
第4節では、統合運用体制の強化の必要性について説明するとともに、統合幕僚監部の新設、情報本部の長官直轄組織への改編など平成17年度における事業などについて。
第5節では、日米安保体制の意義と日米安全保障体制に関連する諸施策について説明するとともに、現在進めている在日米軍の兵力構成の見直しを含む米国との戦略的な対話についてその現況。

第3章「新たな脅威や多様な事態への実効的な対応と本格的な侵略事態への備え」第1節では、新たな脅威や多様な事態に対する自衛隊の対処のあり方、防衛庁・自衛隊がこれまで取り組んできている事項について説明している。これらのうち、周辺海空域の警戒監視と領空侵犯対処や武装工作船などへの対応の項では、「中国原潜の領海内潜没航行事案」の経緯とその対応を記述。コラムで「国連海洋法条約」における潜水艦の領海通航に係る規定を解説。また、大規模・特殊災害などへの対応の項では、新潟県中越地震などへの災害派遣活動について記述するとともに、元・山古志村村長からの寄稿を紹介。
第2節では、本格的な侵略が行われた場合、わが国を防衛するため、自衛隊が行うと考えうる典型的な作戦として、防空のための作戦、周辺海域の防衛のための作戦、わが国領土の防衛のための作戦(着上陸侵攻対処)と海上交通保護のための作戦に概要について、図を多用して説明。
第3節では、わが国に対する武力攻撃自体などへの対処に関して必要な法制の制定までの経緯、その概要、国民の保護に関する自衛隊の行動と今後の課題について。特に今後の課題の中で、国民保護に関する基本方針や国民保護計画、国民保護法に基づく訓練の実施についても説明している。

第4章「国際的な安全保障環境を改善するための主体的・積極的な取組」では、国際的な安全保障環境の改善のために国際社会が協力して行う活動、いわゆる国際平和協力活動への取組、また、国際社会における協力の基盤づくりのためへの取組について。
第1節では、国際的な安全保障環境の改善のために、防衛庁・自衛隊が行っている国際平和協力活動の内容について詳しく説明するとともに、新防衛大綱を踏まえた今後の取組の方向性などに。
第2節では、国際社会における協力の基盤づくりへの取組として、平素より行っている各種の二国間・多国間訓練を含む安全保障対話・防衛交流の推進や国際機関などが行う軍備管理・軍縮・不拡散分野への協力などについて。

第5章「国民と防衛庁・自衛隊」では、わが国の防衛力を支えている様々な基盤のうち主要なものについて、また、防衛庁・自衛隊がどのような分野で国民とかかわり相互に協力しあっているのか、国民からの理解・協力を得るためにどのようなことに取り組んでいるのかについて。
第1節では、自衛隊の組織と人、防衛庁の組織に関する検討、教育訓練、情報通信能力などを強化するための取組、総合取得改革の推進、技術研究開発の充実、秘密保全に対する取組について。
第2節では、国民とかかわりの深い市民生活の中での活動、国民からより一層の信頼と協力を得るために行っている防衛庁・自衛隊の広報活動、公正で民主的な行政の推進に資する情報公開の状況などについて。
第3節では、地方公共団体などによる自衛官の募集・就職援護など様々な活動に対する協力、防衛施設と周辺地域との調和を図るための施策、環境保全への取組、在日米軍施設・区域に関する諸施策について。
第4節では、沖縄県に在日米軍施設・区域が集中し、その整理・統合・縮小をはじめとする沖縄に関連する諸課題については、内閣の最重要課題の一つとして政府を挙げて取り組んでいる。それを背景に、本節では、沖縄に所在する在日米軍施設・区域に関する政府の取組について説明。

<論陣>
不登校調査発表に一提案
もう一歩、現場の実情に沿つた調べを
 「昨年度、30日以上、学校を休んだ不登校の小中学生は全国で12万3千人だった。この数は前年に比べると3千人、率にして2.3%減っている」。これは、ことしの夏に発表されたものだが、毎年、お盆休みの前後あたりに、きまって文部科学省から「学校基本調査結果速報」として発表される。現場の教師への「2学期以降の児童、生徒指導についての参考資料」なのだろうが。調査結果の速報内容が、あまりにも毎年同じ形過ぎて、参考資料の提供というより、"常識の押し付け"行為の感じがしてならない。「不登校生徒の総数が昨年よりさらに減った」数字よりも、「こうしたら、もっとゼロに近くになるのではないか」などの新しい具体的な指導の仕方などを提供してくれたほうが、第一線の教育現場で毎日、こども達と顔を向き合わせて苦労している教員にとっては、資料(数字)の速報より、ずっとありがたいのではあるまいか。
 とも角、ことし8月中ばに文部科学省が発表した2004年度の小中学生の不登校生徒(含児童)の総数は、国公私立合わせて12万3,317人だった。その内訳は小学生が2万3,310人。中学生が10万7人で、いちばん不登校が多かったのは中学3年生で、中学不登校生徒全体の3分の1を占めた。
 ことしの12万3,317人は、2003年に比べると2,900人も減っている。過去で不登校が最も多かったのは平成13年度の13万8千人だったのに比べると、3年連続で減ったことになるが、これは、あながち生徒指導の成果とばかりいえない。なぜならば、世の少子化で児童、生徒の数自体が減っていることによる影響も大きいといえる。
 不登校になったきっかけは、数字よりも重要である。「友人関係など学校生活」というのが36.2%で最も多く、「病気」など本人にかかわる問題が35.6%。「不安」など情緒混乱的なものが多かった。表面から見るともっともらしく表現されているが、裏から見ると「同級生や上級生によるいじめ」「金銭のたかり」「学業成績不良のための劣等感」「万引きなど集団犯罪への誘いを断われなかった」など多種多様である。特に最近目立つのはホームページへの悪口の書き込み、グループ外しなどが目立つ。
 こうした不登校児童、生徒を指導する教員の苦労は文字どおり"苦闘の連続"である。
 時折り学校や周辺に姿を見せた生徒をつかまえて「学校に来るようにしろよ」と言い過ぎると"登校しないじぶんをダメな子"だと思い込んで、さらに学校を敬遠してしまう。家庭訪問をし過ぎたり、父母と密に連絡を取りすぎると「家にもじぶんの居場所がなくなった」と誤解し、遂には家出という悪い結果を生んでしまう。
 教員は「不登校の生徒に寄り添いながら本人を精神的に支援していく形を考え出し、行動していかなければならない。心を解きほぐす努力や生徒の立場で考えることのむずかしさを、単に心理学的論理で解決できるものではない。結局、受け持った"子を知る"以外に道はないのである。
 そのためには教員自身が、学校内だけではなく「社会」いや「世の中」を知るべきである。これまで"教員"を見ていると、とかく学校とPTAの中だけで暮らしているように見える。無意識のうちに「教員の特権」の中に身を置いて生活してしまっているのである。
 社会に溶け込む――ことが、結局、生きた教員研修になり、問題教員の解消につながると思う。教員が、じぶんの特技を社会のサークルや集いに持ち込み、明るく、楽しく、前進的に利用、勉強する。それが、社会の人たちとのつながりを生み、教員が世の中を知ることになるのである。
 「国際化時代に、中学生の語学力が足りない」とか「世界水準に比較して小学生に算数力が弱い」など、中央は、その時々の風潮を流してくる。週休5日制にしたと思うと「平日の授業時間を増やしていい」など、現場の実情を熟知しない言動が多い。「不登校ゼロが目標だ」なども、その最も実情を知らない話である。地道な努力と考えが最良の道である。

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