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   2004年1月15日号
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副長官 政務官『新年のメッセージ』 2面
第1ヘリ師団
年頭編隊飛行を実施
 第1ヘリコプター団(団長・富本啓一陸将補)は1月7日、毎年恒例の年頭編隊飛行を実施した。午後1時半、木更津飛行場を離陸した大型ヘリ19機は、海ほたる、本牧、鎌倉、金谷などの上空を経て、約1時間後に無事木更津飛行場に帰還した。また、本牧から鎌倉へ向けて飛行中、先崎一陸幕長がスーパーピューマで訓練を視察、隊員へ向けて力強く訓示した。
<写真=先崎陸幕長が搭乗するスーパーピューマ(左から2機目)らが横浜〜保土ヶ谷間上空を飛行 写真提供=第301映像写真中隊>

石破防衛庁長官『年頭の辞』
国民の行く末を決定づける節目の年
 石破茂防衛庁長官は1月5日、防衛庁A棟講堂で防衛庁・自衛隊の高級幹部約1,000名を前に「年頭の辞」を述べ、その内容は全国各地の隊員に向けても放送された。石破長官は昨年、有事関連三法やイラク復興支援特措法の成立など、精力的にその任をこなしている。年頭の辞の全文は次のとおり。
高級幹部を前に「年頭の辞」を述べる石破大臣(1月5日、防衛庁A棟講堂で)
 平成十六年の新春に当たりまして、一言ご挨拶を申し述べます。この場にお集いの皆さん、そして全国各地で任務に就いておられる皆さん、あるいはPKO法に基づきまして遠くゴラン高原、そして東ティモールで任に当たっておられる方々、テロ特措法に基づきましてインド洋において任に当たっておられる皆さん、そしてイラク特措法に基づきましてクウェートで活動しておられる諸君、遠く南極にあって任務についておられる「しらせ」の皆さん、明けましておめでとうございます。旧年中は皆さん方の献身的な活動により、この国の独立と平和、そして国民の生命と財産、脅かされることなく過ごすことができました。昨年私はイザヤ・ベンダサンの「日本人とユダヤ人」という本のお話をしたように記憶をいたしております。それは、「日本人は、水と安全はただだと思っているが、決してそうではないのだ」というお話であります。皆さん方の絶え間ない努力があって、国民は当たり前のように思っているかもしれないけれど、国の独立ということ、そして平和ということ、それが守られております。年頭に当たり心から感謝を申し上げる次第であります。
 本年は、防衛庁・自衛隊が創設されて半世紀、五十年という節目の年を迎えます。昨年、考えてみれば、私共は多くのことをなしてまいりました。ある意味で、何年分もの仕事をしたのかもしれません。有事法制、有事関連三法というものが、多くの賛同を国会でも得て成立をいたしました。テロ特措法を延長いたしました。そしてイラク特措法を成立させ、年末には、小牧において、隊旗授与式を行いました。
 多くの新しい問題に我々は直面をしております。要は、冷戦が終わったということはどういうことなのか、冷戦が終わってこれで世界は平和になる、そう思った人は多かったけれども、実際は決してそうではなかった。冷戦が終わったということは、ある意味で、バランスが崩れ、あちらこちらで民族や宗教や領土や政治体制や経済間格差や、そのことに起因する紛争が多発するようになる、それが冷戦後の時代なのだ、ということを認識したときに起こったのが9・11でありました。テロというのは何も二十一世紀の新発明でも何でもない、おそらく有史以来、恐怖を連鎖させることによって自分の目的を達成するというテロは、あったのだと思います。世に言う多くの革命というのは、テロによって起こされた、成就した、そういうものが多かったということも歴史の教えるところであります。しかしながら、今の時代のテロというのは、それが大量破壊兵器とそしてその運搬手段である弾道ミサイルの拡散、それに結びついたところに大きな特徴があり、ある意味で変質をきたしたのだと思います。
 常日頃から、防衛力というのは抑止力だということを申してまいりました。皆様方からそのことを私共は学んでまいりました。しかし、その抑止力が効かないとするならば、我々はどうして国の独立と平和、国民の生命・財産、世界の平和を守っていくことができるのだろうか、そのことにきちんとした答えを出さないと、我々はその責めを果たしたことにはなりません。どうすれば戦争が起こらないか、どうすれば無事の民が傷つかなくてすむか、それはきれいごとを言っていれば済むというものではないと私は信じております。
 イラクに自衛隊を派遣することができる、というのがイラク特措法でありました。そして、その派遣の決断がなされました。基本計画が策定をされました。周辺事態法を作る、それは日本の平和と独立、それが脅かされるような事態になったらどうするか、そのまま放置すれば国の独立と平和が脅かされるかもしれない、そういうものに対応するためでありました。PKO法は国連下の活動そのものであります。テロ特措法、そしてまたイラク特措法、それぞれ性格は違いますが、全ては日本国憲法の趣旨を体言したものだと私は思います。自国のことのみに専心してはならない、自分のことだけ考えればよいのではない、平和は自分たちが作り出すものであって、与えられるものではない、憲法の前文にはそのことが記されておる。そして憲法九条、それは侵略戦争を行ってはならない、そのことが記されている。正しく憲法が問うているもの、それを活かしていかねばならない、そういう時代に我々は生きております。
 今年は国民保護法制、この成立を図っていかねばなりません。この成立を見なければ、有事法制はほとんど機能しないと言っても過言ではありません。なぜ、前の大戦で、多くの罪もない人々が死んでいかねばならなかったのか、そのことに思いを致すときに、国民保護法制というのはどうしても成立をさせていかねばならない。その場にあって、我々自衛隊はどのように活動するべきか、ということをきちんと確立をしておかねばならない、法律さえ作ればいいというものではなくて、それをどうやって実効性あるものにするか、我々に課せられた課題であります。
 もう一つは「在り方検討」というものに、今年はきちんとした答えを出していかねばなりません。我々にとって、今年最も大きな課題の一つは、この「在り方検討」であり、新しい大綱の考え方を作っていくことであります。
 「力の空白論」というものがありました。それは冷戦期においては、誠に正しい理論であったし、そのことによって平和と独立が保たれたことも事実であります。しかし、周囲の環境がこれだけ変わったときに、その考え方がそのまま維持できるものなのかどうか、その検証はきちんと行っていかねばなりません。いつも申し上げることでございますが、検証というものをきちんと行っていかねばならない、これでもいいんだということではなくて、これでなければならないのだという、そのぎりぎりのことを求めていかなければ我々は仕事をしたことにはならないと思っています。これでもいいんだではなくて、これでなくてはならないのだというものを作っていくことが、国民に対する、そしてまた世界に対する我々の責任である、このように信じております。それは納税者に対する責任でもあります。ともすれば、安全保障の議論というのは、しない方がいいのかもしれない、そういう風潮が長くあったのかもしれません。そういう議論をすることすら、一種のタブーであったのかもしれません。それが、正しい時代もあったと思います。しかし我々は今、そのような時代に生きておりません。私共は、決して自己保身を図ってはならないと思っております。自己保身を図るために、議論を避けるということは、決して国家のためにも国民のためにもなりません。
 「事に臨んでは身の危険を顧みず、身を挺して国民の負託に応える」、私は自衛隊とは何かと聞かれたときに必ずそのような宣誓をした人たちの集団が自衛隊である、という風にお答えをするようにいたしております。ここが私共の、他の官庁と決定的に異なる点だと思っています。誓いというのは言葉だけのものではない、私自身は自衛隊員ではありませんけれども、そういう誓いをなした皆様方と共に働くという責めを与えられている自分を思うときに、いつもその言葉を繰り返し自分の胸の中に問いかけるようにいたしております。真の意味における文民統制とは、そのような誓いをした皆様方に応えられる存在で我々はあるかどうか、その一点に掛かっていると思います。その誓いをなした皆様方が、今ここに、そして全国各地に、世界各地におられます。そういう皆様方に応える存在であるのかどうか、私も、副長官も、そして政務官も常に自らに問いかけ、自らを律してまいりたい、そのように考えております。
 国民の皆様方は、聞く耳を持っておられます。年末に基本計画を策定をした、総理が記者会見で、「自衛隊でなければならないこと、自衛隊でなければできないことだから、自衛隊がやるのだ」ということを仰いました。そして、「危険がないとは言わない、危険があるからこそそれを避けることができる能力を持った自衛隊がやらねばならないのだ」ということをはっきり仰いました。小牧で式典がありました。格納庫の中で式典を行いました。決してすばらしい天気というわけではありませんでしたが、たなびく雲の中から夕日が一葉の光を差しました。新しい時代が来るのだ、と思いました。イラクの困難な人々に、何としても救いの手を差し延べていかねばならない、イラクの人一人一人に、日本があってほんとによかった、そういう風に思ってもらいたい。決して戦争しに行くわけでもなく、我々のやるべき事はあの地の人々に、高い能力を持った、高い潜在力を持ったあの地の人々に、我々の体験を通じて得たことを共に分かち合っていただき、一人でも多くの人々に幸せを与えることだ。そして我が国の独立と平和は我が国のみによってなし得るものではありません。間違いなく日米安全保障条約の存在があって、我々の存在と相俟って、我が国の平和と独立が守られております。イラクに行かなくても日米の安全保障体制は微動だにしない、そういって反対される方もいます。しかし私は、そのような功利的な考え方だけに立てばいいというものだとは思っていません。お互いの信頼関係とは単なる条約の一条一条によって作られるものではない、共に苦しいとき辛いときに共に目的を同じくし、活動する、それが我が国の平和と独立に資するものである、私はそのように信じて疑わないのであります。
 色々と雑駁なことを申し述べましたが、今年は本当に我々にとって大きな節目の年となります。それは単に我々にとってだけではありません。この国家の、そして国民の行く末をある意味決定づけるものになります。我々が今年どのように活動するかが、まだ見ない我々の次の時代の人々の幸せも決めていくのかむしれません。好むと好まざるとに関わらず、我々は歴史の変わり目に今生きています。歴史を作っていくというそういう任務を与えられています。新しい時代の世界の平和も、日本の平和も、世界の人々の幸せも、国民の幸せも我々が作っていくのだという誇りを持ちたいと思っています。防衛庁でなければ、自衛隊でなければできない、そういう仕事を今年一年したいと思っています。今年一年、誠心誠意私共四名働いてまいるつもりであります。誠心誠意、そして全力を尽くしてこの一年を生きてまいりたいと思います。皆さん方の努力によって、今年一年、世界が少しでも平和に近づきますように、そして我が国が独立を保って平和でありますように、皆様方とそしてご家族の方々、この一年のご健勝、心から祈念をいたしまして、私のご挨拶を終わります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。(1〜2面)

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