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   2003年8月15日号
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<論陣>
事前の訓練・勉強が大事
イラク支援、いよいよ本番
 イラク復興支援特別措置法(イラク復興支援法)が国会で決議(可決)された。約1ヵ月間の与野党審議だった。当然、自衛隊員や政府関係者が、戦後混乱しているイラクの人達の救援のために派遣されることになる。3月20日から、ブッシュ米大統領が大規模な戦闘の終結を宣言した5月1日の短かい期間だったが、激しい戦闘のために国内の荒廃ぶりは目をおおいたくなるほどである。水、電気、幹線道路、政府関係施設などの社会基盤をはじめ民家の崩れぶりもひどい。イラクの復興は文字どおりゼロからの出発である。組織集団として派遣される自衛隊などはゼロを基点として作戦を展開することになる。
 政府も法律も、非戦等地域で活動する「絶対に犠牲者を出さない」ことを確約している。といっても「出発せよ」「ハイ、行ってきます」という簡単なことではない。"絶対に安全な状態を確認"しなければならない。
 いまこそ必要なのは"情報"である。綿密な情報があり、それを元に正確な分析があってこそ"正しい判断"ができる。現地の情報は流動的である。いわゆる静態情報だけでは判断の材料にはならない。動態的情報こそが、こんどの作戦展開には最も必要であり、最も大切な情報なのである。
 7月31日、衆参両議院の第1次調査団が日本を出発した。その後も政府関係者の調査グループが訪イする。だが、その情報だけを中心に置いて分析してはならない。防衛庁・自衛隊の情報担当者が"戦場"との視点からくわしく、幅広く情報を集めることが大切である。もちろん、現地で活動している米英軍からも「軍人の立場」からの軍情報が必要である。最高指揮官である内閣総理大臣、防衛庁長官の判断が狂うかどうかも、もっぱら軍情報の正確さの正否にかかっている。
 情報に次いで必要なのは、隊員(派遣)に対する"訓練"である。指揮官、幹部、一般隊員によって訓練の内容は違うが、基本的には、非常事態への対応である。過去の歴史をみると「一兵士の恐怖からの小銃弾の一発」が、大規模な戦闘になっている場合が多くある。「どんな事態になっても決して最初の引き金を引かない」判断を決意するべきである。部隊である限り、上官の合議の結果に従うことが大切である。
 日本国内で生活しているのと違い、外国には、日本と全く違う生活習慣がある。「こんにちは」「なにがしてもらいたいの?」など日本人としてはごく普通な言葉使いひとつでも、相手の解釈が全く違う。いちばん理解できないのは「イスラム教」である。イスラム教徒とひとまとめにできない。イスラム教は「シーア派」と「スンニ派」に分かれている。同じマホメットを信じていながら"考え方"は全く違う。そのうえ「イスラム教」は、その昔、"ユダヤ教"から出ているのである。でありながらイスラム教のパレスチナ人と、ユダヤ教のイスラエル人が長い長い戦闘を展開している。どう考えても、日本人の宗教観では見当がつかない。ラマダン(断食月)も理解がむずかしい。イスラムではひと月が29日なので、月日は決まっていないが、必ずやってくる重要な行事である。なぜ、太陽が昇っている昼間に断食し、夜になると食事ができるのか。戦闘中の軍人(イスラム教徒)だけに1日5回の礼拝が免除されないのか。そうした根幹をはっきり知って現地に行かないと、迷うことだらけである。特に指揮官は、こういう生活習慣や宗教上の知識を事前に「よく学んでおく」必要がある。武器の使用などのほか"基本の勉強"は大切である。
 自衛隊はいつ派遣されるのか?。最近、よく、こんな質問をされる。「自民党の総裁選挙がある9月20日までにはないでしょう」と答えるのが、せいせいである。そのあとに来るかも知れない11月9日説や総裁の交代など不測の要因などいちいち考えていたら、派遣の時期など予測できるはずがない。関係者は「10月以降はいつでも派遣命令が出る」ことを覚悟して"事前"の訓練や勉強に力を入れたほうがいい。水の浄化、物資の輸送、ものの補給なども重大な任務である。こうしたことの「方法論熟知」も大切である。結局"支援"は「目に見えるもの」である。はっきり「日本の自衛隊が、これをやってくれた」といわれる作戦を展開してもらいたい。

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